Saturday, May 27, 2006

安部公房

不条理な世界を描いていく安部公房は、「変身」で知られる、KAFKAと並び比較される作家である。

この「砂の女」は実に愉快な場面がある。BSでも放映されていた「安部公房を読み解く」番組があり、やはりその部分を指摘している。

『女が食事を持って来た。食卓の上に唐傘を吊るす。「砂が降ってきますから」 女は言った。』

もっとも絶望的な不条理の世界に入る前の台詞であるが、つい笑ってしまう。

ストーリーは、砂丘を掘った中に建てられた一軒家に住む未亡人と、砂丘で迷った男との話であるが、砂の家から離れない女は、砂を運ぶための労力を必要とする。その砂は村の資金源にもなるのだから、部落のものも、迷い込んだ男を騙し、その女の家へつれて行く。

この安部公房の「砂の女」は、勅使河原宏が監督、音楽は「世界のTAKEMITU」と称される武満徹が担当し、1964年公開された。あの鬼才グレン・グールドが、日本の芸術作品に傾倒したひとつがこの作品。、「カラー映画はモノクロ映画の強烈版ともいえるけれど、必ずしも色彩が必要とは思わない。白と黒のほうがいいものは、たくさんある。『砂の女』をカラーでは見たくない」と言っていたグールドが、漱石の草枕とともに偏愛した作品だ。

安部公房の文学作品には、「箱男」がある。元カメラマンの男が撮った写真に写っていた箱男を追跡するうちに、自分が箱男になっているのだ。ダンボールで作った箱を頭からかぶってそれを脱がずにすべて箱の中で生活し、そうでなければ生きていけないという精神状態を描く。「壁」という物語もおもしろい。名前をなくしてしまった男の話である。現代に置き換えるとIDだ。

これらの作品は、30年まえの創作である。まさにアヴァンギャルドな作家。

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